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2006年6月17日 (土)

クラウディング・アウト

マンキューとデロング、そしてクルーグマンの三者間でクラウディング・アウト談義が行われたとのこと(Economist's ViewにおけるMark Thomaの(IS-LM図を用いた)まとめ参照)。

マンキュー 「LM曲線は(FRBが特定の利子率水準を維持すべく金融政策を運営する結果として)横軸に対して水平になるから財政支出の効果がクラウドアウトされることはない」

クルーグマンデロング 「LM曲線は(FRBが潜在GDP水準を維持すべく金融政策を運営する結果として)横軸に対して垂直になるから財政支出は完全にクラウドアウトされる(デロングによる注;経済が流動性の罠に陥っている時あるいはFRBが政府当局の(財政支出)行動を把握し、それに対応(財政支出が総需要へ与える効果を相殺)するまでの超短期的な期間においては財政支出の効果はクラウドアウトされることはないだろう)」

IS-LM(図)の開発者(とされる人物)によるおまけ。

only we can now generalize our LL curve a little. Instead of assuming, as before, that the supply of money is given, we can assume that there is a given monetary system --that up to a point, but only up to a point, monetary authorities will prefer to create new money rather than allow interest rates to rise. Such a generalized LL curve will then slope upwards only gradually --the elasticity of the curve depending on the elasticity of the monetary system (in the ordinary monetary sense). (J.R.Hicks、“Mr. Keynes and the Classics”)

ここで可能なことはLL(=LM)曲線を少しばかり一般化することである。これまでのようにマネーサプライを所与と仮定するかわりにある特定の貨幣制度―貨幣当局が利子率の上昇を容認するよりはマネーサプライをある程度しかしながらある限度内において増やす(新規貨幣を創出する)ことを望む(所得の増加に随伴する利子率上昇の程度を弱めるためにマネーサプライを供給する)―を仮定することができよう。そのように一般化されたLL曲線はこの場合緩やかな右上がりの勾配をもつであろう。LL曲線の弾力性の程度は(通常の金融的な意味における)貨幣制度の弾力性の程度(=貨幣当局が利子率上昇に対してどれだけのマネーサプライ供給に応じるか)に依存するのである。

ヒックスに従えば、マンキューは完全弾力的な貨幣制度を、クルーグマン+デロングは完全非弾力的(正確にはなんだろうな~、完全中立的?)な貨幣制度を、(in the short runにおいて)それぞれ想定しているということになりますかね。

この引用箇所の後に続くヴィクセル絡みの議論が面白かったりする。

(追記)マンキューの議論はカプラン(Bryan Caplan)の質問(=貨幣需要が利子率に関して完全に非弾力的である結果としてLM曲線は横軸に対して垂直になるのではないか)に端を発しているようですね。

「Laurence Ballの貨幣需要に関する実証研究(“Another look at long-run money demand”(pdf))によれば、貨幣需要は名目利子率に対して完全に非弾力的とはなっていないからLM曲線は垂直にはならない、むしろ現在のFedのようにテイラールールに従った利子率ターゲティング政策を行っているような状況においてはLM曲線は水平に近くなるだろう。」(マンキュー談;Monetary vs Fiscal Policy

「いやいやちょっと待て。2%のインフレ率を暗黙のターゲットとしている現在のFRBが連邦政府の財政出動を指をくわえて見守っているわけがない。FRBは財政出動に対して利子率の引き上げと流動性の吸収(=金融引き締め)を通じてインフレ率が2%を超えないよう政策対応する(=財政出動の効果を相殺する)はずである。今日のアメリカ経済においては拡張的な財政政策によっては一時的であっても職が生み出されることはないだろう(=LM曲線は垂直である)―流動性の罠という異常な状況にあるかまたは財政出動が突然強行され、FRBが即座に対応できない状況を除いては」(デロング談;Fiscal Policy Multipliers

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